あなたには出さない手紙

送らないけど読んでくれたら嬉しい

思い出される

誰かに覚えていてほしいという欲求はかなり小さめで、何ならもう会わない人たちにはすっかり忘れてしまって二度と思い出さないで欲しいし、私がいなくなった世界からは私の痕跡を消し去って欲しいと思っているところもあるけれども、私につながる何かを見て聞いてということをきっかけに連絡をもらうと存外に嬉しいということに気づいた。

もちろん相手によるし、そもそも自分が好ましく思っている人からの連絡はそれ自体で嬉しい。私の好きなことを憶えてくれていることも嬉しい。またその取り扱いの塩梅も大層良いと嬉しい。

という具合にそれ自体嬉しいことではあるけれども、嬉しかった自分に気づいたことそれ自体もまた思いのほか嬉しいことだった。